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トミーウォーカー運営PBW『エンドブレイカー!』、その登録キャラ『ファルス・ランディール』のキャラブログ
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しんと静まり返った夜明け前の空気が耳の奥で反響する
痛いほどの冷たさに満たされた庭に佇む、真白の花は物言わず微笑むだけ

駆け抜けた一陣の風に攫われて、花弁がはらり宙を舞う
翻り、裏返り、表に返ったその姿が、昇る朝日に照らされて仄かに色づく

後を追い伸ばされた指先をすり抜けて、白の花弁が空を舞う
甘い香りが鼻先を擽ったかと、思う間も無く風に散っていった

「今年もこの時期がやってきたわ」

昨年、ファルスにシャルムーンデイについて仔細に解説してくれた彼女の唇から告げられた言葉
店内に漂う甘やかな香りは彼女が作ったであろう菓子の名残だろうかと考えて
彼女の手元に琺瑯製のボウルがいくつか並んでいるのを見てそうでないことを悟る
確かに残り香だけで、ここまで濃密なショコラの香りが室内に充満する事はあるまい

明けの頃に寝入ったファルスを、まだ昼の日の高いうちに温もりの内から誘い出したそれは
階下に降りれば、眉を顰めずには居られぬ程に強かった
温められて、溶かされて、いっそう芳醇に香っているのであろう

「ファルスも作るんでしょう?」

道具なら貸してあげるから好きに使ってねと続ける彼女の意識は
ショコラの湖から掬い上げた甘露に向けられて、もはやファルスには向いていない
訊かれずとも、作るつもりだった事もあって、渡りに船と厚意に甘える事にする

調理台の上には、丁寧に刻まれたショコラのブロックであったはずのものが、小さな山を築き
丸のままローストされたナッツ達、刻んだ胡桃にスライスされたアーモンドも硝子の小鉢で待機中
柑橘類のピールは黄から橙、さらに隣のジンジャーへとグラデーションを描き
香り付け用と思しき蒸留酒のボトルが、蓋を開けられたまま並んで背比べ中
くるり見渡して「あれ?」と首を傾げれば

「生クリーム用の生乳はテーブルの上よ」

まるでこちらの心を読んだかの様に、探し物の居場所を告げられて、思わず苦笑い
教えられたテーブルの上に居たのは生クリームだけではなかった
トリュフの芯材用にだろうか、一口大のサイズに整形されているキャラメルやガナッシュ達
果てはこの時期にはまだ珍しいはずの苺まで並んでいる

「これは配りきれるのかのう?」

すべてが完成したとして、いか程の量となるのか考えたくない

「余ったら食べればいいのよ」

笑顔で返された、独り言への返事は、簡潔でにべも無い
明日から続くであろう甘い日々の誘いは、ほんのり苦いビターの香りがする気がした
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