私には父がいない

より正確に言えば　　　父はいないという事にしている

この世で男という存在なくして子を成すことができるというならば別なのだろうが
今のところそんな稀有な例には出合ったことがない

ならば私には確かに父と呼ぶことができる相手がいたのだろう

けれど私は、それが誰かということを一度たりとて母に尋ねなかった
知りたくもなければ、聞きたくもない
核心に至る現実から眼を逸らしていたかった

そう　　　　　、私には分かっている　誰が私の父なのかは知っている

だからこそ、何故、それを否定するかを語ることは難しい
感情か環境か何が理由なのかを説明するには
有り余るほどの時間と、枝分かれする数々の理由を束ねる『モノ』が要る

だから

私に父はいない
それでいい